マッドリブが12カ月連続でリリースする新シリーズ『medicine Show』の第一弾
Madlib
『Medicine Show Vol.1 - Before the Verdict』
STONES THROW
フォーマット:CD
スクラッチやSE、エコーを駆使した映像喚起力の強い音世界
ちょっと抜いたというか、好き勝手やっているときのマッドリブが好きだ。そもそもカジモトにしてもイエスタデイズ・ニュー・クインテットにしてもオーセンティックなヒップホップのフォーミュラからは外れたものだったわけで、音響的側面を含めたその"ハミだし方"に多くのリスナーはフレッシュさを感じたのだと思う。
2010年の1年間にわたって毎月アルバムをリリースするという驚異の新プロジェクト『Madlib Medicine Show』の第一弾は、自らプロデュースした西海岸の実力派MC=ギルティ・シンプソンのアルバム『Ode To The Ghetto』からの9曲を、彼とのユニット=OJシンプソン(!)名義でリミックス。J・ディラとの「Young Guns」を含めた全17曲を収録している。
同時期にリリースされるストロング・アーム・ステディのビートが比較的ストレートなものだったのに対し、こちらはSEやスクラッチを随所に散りばめたコラージュ的な作り。エスニックねたやエコー、演説のサンプルの上からギルティ・シンプソンがお構いなしにラップを重ね、ジャケット同様、カオティックな音像を作り上げている。また中ジャケの写真/アートワークも秀逸で、組曲的な構成も相まって、SFショート・ムービーのサントラを聴いているような気分にさせられる。
なお2LPのアートワークは即興Tシャツ制作集団=HIT+RUNとのコラボレートした手刷り仕様。ピーナッツ・バター・ウルフは以前からインタビュアー泣かせというか、先日のロサンゼルス取材の際にアナログ・レコードへのこだわりを聞いても、"好きなものを刷って出しているだけ"という感じの受け答えなのだが、リスナーが欲しているものを現場の皮膚感覚で感じ取り、サッと対応してくる。A&Rとしての才覚は天賦のものというほかないだろう。
白石裕一朗(サンレコ編集部)
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