BlogやWebサイトで音楽や映像を扱うにあたって、権利関係をどのようにクリアすればよいのか迷ったことはありませんか? 当コラムでは、そうしたインターネット著作権の考え方を、具体的な事例をもとに明らかにしていきます。
Q. 1 インターネットのストリーミングで10人程度の友人にレコードを利用したDJ番組を制作して配信する場合、音楽の権利処理は必要なのでしょうか?
A. 1 "10名程度の友人"を、どう法律的に評価するかにかかわってきます
まず、配信する番組のためにレコードを複製して、番組を制作した後に公衆にストリーミング配信をする場合を考えてみましょう。この場合、レコードを複製する行為について、著作者が持つ楽曲の複製権(21条)、実演家が持つレコードに収録されている実演の録音権(91条1項)、レコード製作者が持つレコードの複製権(96条)が働きますから、彼らから許諾をもらわなければなりません。さらに番組をインターネットで配信する際に、著作者が持つ楽曲の公衆送信権(23条1項)、実演家が持つレコードに収録されている実演の送信可能化権(92条の2)、レコード製作者が持つレコードの送信可能化権(96条の2)が働きますから、彼らからそれらの許諾も合わせてもらわなければなりません。
次に生中継型のストリーミングによるインターネット放送でレコードの複製を伴わない場合の公衆への配信を考えてみましょう。この場合は、番組をインターネットで配信する際に、著作者が持つ楽曲の公衆送信権、実演家が持つレコードに収録されている実演の送信可能化権、レコード製作者が持つレコードの送信可能化権が働きますから、彼らからそれらの許諾をもらわなければなりません。
上記のケースはあくまでも公衆への配信についてであり、質問のように10名程度の友人を対象とした配信の場合は、どのようになるのでしょうか。以下、法律的に分析して考えてみましょう。
最初のケースでは、まずストリーミングにより配信する番組のためにレコードを複製する行為が、私的使用目的の複製に該当するかということが問題となります。私的使用とは、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」(30条1項)をいいますから、10名程度の友人をどう法律的に評価するかに関わってきます。条文の「これに準ずる限られた範囲内」については、複製をする者の属するグループのメンバー相互間に強い個人的結合関係のあることが必要といわれており(加戸『逐条』216頁)、10名程度までの社内の同好会やサークルなどが典型例とされています。したがって、ジャズ同好会のメンバー10名に送信する目的であれば、個人的結合関係がある閉鎖的グループ内での使用ということで私的使用として認められると思われます。しかし、ただの知人・友人というだけでは個人的結合関係がある閉鎖的グループとはいえませんから、私的使用として認められないでしょう。
次に最初のケースと2番目のケースに共通する問題として、10名程度の知人に番組をインターネットで配信する際に、著作者の公衆送信権、実演家の送信可能化権、レコード製作者の送信可能化権が働くかどうかということがあります。すなわち、10名程度の友人はこれらの権利行使の要件である「公衆」に該当するのかという問題です。公衆とは、「不特定かつ多数」、「特定かつ多数」、「不特定かつ少数」をいい、「特定かつ少数」だけが公衆ではないとされています(2条5項)。したがって、10名程度の友人が「特定かつ少数」に該当するかということですが、友人は行為者との間に個人的な結合関係がありますから「特定」に該当し、あとは10名という数が多数か少数かということが問題となります。条文上、何人までが少数で何人からが多数であると明記されておらず、多数・少数は不確定概念とされていますから、具体的なケースに応じて多数・少数を判断することになります。
質問のケースですが、10名程度の閉鎖的なグループであれば、レコードのサーバーへの複製は私的使用目的として認められますし、さらに配信行為についても「特定かつ少数」として自由利用を認めてよいと思います。ただし、グループが数十人以上の規模のものや相手をあまり知らない結合性が薄いものは、著作物やレコードの自由利用は認められません。あくまでも著作権者の利益を不当に害しない限度にて、自由利用ができることに留意すべきでしょう。
(安藤和宏)
【Profile】北海道大学大学院法学研究科特任教授。著書は『よくわかる音楽著作権ビジネス基礎編 3rd Edition』『よくわかる音楽著作権ビジネス実践編 3rd Edition』など多数
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